私たちの思い
現在、日本は未曽有の多死社会を迎えようとしています。
多死社会とは、言い換えれば、大切な人を亡くして、悲嘆(グリーフ)の苦しみを抱えるご遺族が増えていくことを意味しています。欧米と比較して宗教との結びつきが緩やかな日本は、宗教者による遺族のケア(グリーフケア、ビリーブメントケア、以下遺族ケア)が充分に普及しているとは言い難い現状です。
また、精神医学的、心理学的な側面からも、エビデンスに基づいた遺族ケアが求められ始めていますが、悲嘆カウンセリングや悲嘆に焦点化した心理療法に精通した医師や臨床心理士、公認心理師は多くはありません。
「グリーフ」とは一般的には「悲嘆」と訳され、狭い意味では「死別の悲嘆」「死別の悲しみ」と解釈されることが多いですが、本来は死別の悲しみだけではなく、大切なものを失うことによって生じる反応全般を意味します。反応全般には感情的なものだけでなく、行動的、身体的、社会的なものも含みます。一方、「ビリーブメント」は死別という状況そのものを指しています。医学がどれほど進歩をしても私たちの生活の中には「ビリーブメント」と「グリーフ」があり、それらは人が生きていくことから切り離すことはできないものです。
ようやく日本でも「グリーフ」という言葉が認知され始め、草の根的に「グリーフケア」を提供する場や、グリーフケアを担う人材を養成する民間団体などが増えてきました。自分自身の経験からケア者を目指す人も急激に増えており、わかちあいの会や寄り添いの場が全国様々な場所で展開されています。
それは同時に、ケアを担う者は、ビリーブメントを経験しグリーフの苦しみを抱える方々を自分はどこまで支えられるのか、この方のグリーフにはどのようなケアが必要なのかということを真摯に考え、的確に判断することの重要性を認識すべき時期が来ていることでもあります。わかちあいや寄り添いだけでは解決できない強い悲嘆(遷延性悲嘆症など)を見過ごすことのないようにし、専門家につなげることも視野にいれることも大切なケアのひとつなのです。
私たちは、ケアを提供する者の責任として、学ぶ姿勢と研究する努力を持ち続けたいと思います。
目指すこと
当研究所のメンバー、スタッフは、若くして、あるいは幼少期に伴侶や親を亡くした当事者で構成されています。それぞれが形の違うグリーフを抱え、時間を重ねて生きてきました。
私たちは、一人ひとりのビリーブメントやグリーフと真摯に向き合い、悲嘆反応の強さや期間、また、その背景にあるものを的確に判断し、多層的なケアを提供すること、あるいは必要なケアにつなぐことを目指しています。
同時に、医学的、心理学的にエビデンスのあるグリーフケア、ビリーブメントケアの研究を推進し、その普及を図るとともに、必要な情報やサポートを求める人に届けられる社会システムの構築を目指します。
メンバー紹介
大岡友子
幼少期に父を血液がんで、40代で母を突然死(心臓発作)、夫を膵臓がんで立て続けに亡くして悲嘆に暮れた経験から、長年勤務した金融系企業を退職して大学院修士課程に入学、専門的な遺族ケア(グリーフケア)を学ぶ。
現在、同大学院博士後 期課程にて遷延性悲嘆症 治療について研究、実践する傍ら、武蔵野大学心理臨床センター、築地本願寺銀座サロン、がん研有明病院腫瘍精神科、メンタルクリニック遺族ケア外来でカウンセリングを行っている。
- がん研究会有明病院 腫瘍精神科 公認心理師
- 武蔵野大学心理臨床センター相談員、臨床心理士、公認心理師
- 柏駅前なかやまメンタルクリニック臨床心理士、公認心理師
- 日本興亜損害保険株式会社 人材育成担当者 損害査定担当者
石森恵美
悲しみの形は変わることをご存知ですか。
へこんでいた悲しみが、尖ったり、背伸びをしたり、角ばったり。
時間をかけて悲しみの形は変わります。
形の変わり方も、時間の長さも誰一人同じではありません。
私は行きつ戻りつしながら、悲しみの中に愛おしさと温もりを感じることができるようになりました。
ご一緒しませんか。悲しみと慈しみの時間を。
- 1年8か月という短期間に夫を始め、父、義母、義姉4人を亡くす。
- 二人の息子は当時中学3年と1年。
- 上智大学グリーフケア研究所人材養成講座修了
- 上智大学認定臨床傾聴士
- 公益社団法人子どもの発達科学研究所認定講師
- フリーアナウンサー(元東海ラジオ放送アナウンサー)
- 絵本学会所属